とても良いTED talkがあったのでご紹介。
この方は、映画『アリスのままで(原題:Still Alice)』の原作を書いた作家で、脳科学者でもあるリサ・ジェノヴァさん。
アルツハイマーを予防するために何ができるか?
日本語訳がないので、拙い訳ですが、若干省略しながらかいつまんで訳します。
私たちの脳のシナプスでは、様々な脳内伝達物質と一緒にアミロイドβというペプチドを排出し、脳の活動を行っています(ちなみにアミロイドβは脳の成長に必要な物質です)。通常、シナプス間に散らばったアミロイドβはお掃除されて綺麗になりますが、40歳を過ぎるとだんだんとお掃除の力が弱まり、シナプス周りにアミロイドβが蓄積されて、アミロイド斑と言う老廃物の塊ができます。15年、20年と経ち、これらアミロイド斑の蓄積が限界点を増えると、脳の炎症が起こり始めます。炎症が酷くなると細胞が死に始めます。この経過に伴い発症するのがアルツハイマーです。炎症がさらにひどくなり、細胞が死んでいくにつれ、症状が悪化していきます。
アルツハイマーは発症してから対処しても遅く、アミロイド斑が限界点まで蓄積される前にどうやってアミロイドβをお掃除していくか、どのように予防していくか、が、大切になります。
映画のアリスのように、アルツハイマーにかかりやすい珍しい遺伝子はあります。しかし、通常は遺伝子だけがアルツハイマーにかかる原因にはなりません。例えば、アミロイドβを増やしやすいAPOE4という遺伝子を両親から受け継いでいても、アルツハイマーにかからない人もいます。
何が影響するのか?
アミロイド斑を限界点に達しないようにする有効な手段として、まず、「深い眠り」。眠りは脳の強力なクレンジングです。眠りによって脳の老廃物をお掃除します。寝不足はアミロイドβを増加させ、アミロイドβの蓄積が睡眠を妨げます。この悪循環が限界点に至るのを加速させます。
その次に重要なのは心血管疾患を予防する有酸素運動と質の良い食事。アルツハイマーの患者の8割に心血管疾患が見られ、高血圧、糖尿病、肥満、脂質異常、喫煙はアルツハイマーのリスクを引き上げます。これら生活習慣病・心血管疾患を引き起こす食事や生活習慣を改善しましょう。
実は、『遺伝があり、十分な睡眠をとっておらず、食べたいものを好きなだけ食べてて、アミロイド斑を大量に作り、脳に炎症が起こっている』としても、アルツハイマーになるのを防ぐ方法が1つだけあります。
それは、神経可塑性と認知的予備力に関わることです。シナプスの数は百兆個以上あり、神経可塑性というプロセスを通じて常に増えたり減ったりしています。新しいことを学ぶたびに、新しいシナプスを作り出します。
ある研究で、678人の75歳以上の修道女の健康診断と認知力を20年以上にわたって測り、死後の解剖で脳を調べました。幾つかの脳には脳の萎縮や老廃物など明らかなアルツハイマーの兆候が見られたにもかかわらず、これら修道女達の存命中にアルツハイマーの症状は一切見られませんでした。
修道女はハイレベルの認知的予備力があります。教育、高い教養、定期的な精神と知力の刺激は、多くの認知的予備力、要するに大量の余剰シナプス、をもたらします。例え、歳をとり、多くのシナプスが傷ついたとしても、それを補うバックアップのシナプスが大量にあったということです。シナプスの数をたくさん持っていればいるほど、情報をたくさん蓄えられ、アルツハイマーに対する抵抗力をつけられます。
この、認知的予備力を増やす方法は『新しいことを学ぶこと』です。できれば、この『新しく学ぶ経験』をさらに豊かにするため、見て、聞いて、感じながら、新しいことを学びましょう。『新しいことを学ぶこと』とは、すでにある知識を思い起こしたり、クロスワードパズルをすることではありません。アルツハイマーに抵抗力のある脳を作るには、イタリア語を学んだり、新しい友達を作ったり、本を読んだり、『新しいことを学んで新しいシナプスを創り上げる』ことです。
アルツハイマーの祖母から3つのことを学びました。「アルツハイマーは明日すぐ死ぬという病気ではなく、生き続けないといけないということ」「感情の記憶は失わず、愛や喜びを理解できること」。アルツハイマーの人は、5分前に私が言ったことは忘れるかもしれないけれども、私がその人に感じさせた感情を忘れることはありません。
そして、「記憶はただの記憶であり、あなたの存在はあなたの記憶以上のものであるということ」です。
以上
さてさて、ナチュロパシーの修士課程でも真剣に考え始めましょうか...。いくつになったとしても。