おっぱいフローラ

シドニーに残してきた荷物の中で一番早く手元に戻したかったのはこれ。まゆさんの木の写真。まゆさんは文武両道でしかも美しいフォトグラファーで、おこがましい言い方ですが、私が目にしている木や自然の姿そのままを切り取って写真にしてくれています。愛で方、美しさの見方、エネルギーの感じ方、コミュニケーションの仕方、どれをとっても「これ、これ、これ」という、本当にハートがぎゅっとする木々の写真。

この1枚は、シドニーでの毎日のアセスメント地獄の中デスクに飾って一緒に頑張った戦友。どこかしっかり定住する場所ができたら(まだしていないのか!?)、もうちょっと買い足していけたらなと思います。まだちょっと物を増やすのが恐怖ですが。

えー、今日は、おっぱいフローラのお話。腸内フローラの名前でお馴染みの、腸内マイクロバイオーム(細菌叢)。善玉菌と呼ばれるビフィズス菌とかラクトバシラス(乳酸菌)など、悪玉菌も含めた細菌叢、マイクロバイオームですね、あれが、乳腺にもいます。

妊娠前にデトックスをして、妊娠中、特に最後の三ヶ月から産後の期間はプロバイオティクスの摂取を勧めますが、それもこれも、妊娠中のお母さんの免疫のバランスを整えて、遅延性(IgG)アレルギーの反応を極力減らし、胎児のアレルギー発生を予防し、また、産後の1年、お母さんの体の中の腸内マイクロバイオーム(細菌叢)のバランスを整えることで母乳に含まれるマイクロバイオームのバランスを整え、出産後1年で一生涯のパターンが決まってしまう赤ちゃんの腸内マイクロバイオームをより良いものにするためです。体の細菌叢のバランスを整えておくことで、将来的なアレルギー疾患、心疾患疾患のリスクを減らすことができます。

乳腺のマイクロバイオームのバランスは乳がんにも関係していて、乳がんが発症している乳腺組織ではラクトバシラスが少ないことがわかっています。

で、このおっぱいフローラ(語呂がいいのでマイクロバイオームでなくフローラとここでは呼びます)、最近の研究で、食事でもそのバランスが変わることがわかりました。

人とよく似た猿を用いた研究で、典型的な現代の西洋食(甘いものや加工食品の高脂質・高糖質食)と、世界でも健康・長寿食と呼ばれている地中海料理(野菜、魚、オリーブオイル)を31日間食べて、検査をしたところ、地中海料理の方が乳腺組織に10倍ものラクトバシラスが確認されたそうです。

単に、善玉菌のラクトバシラスが増えているだけでなく、胆汁酸代謝物やマイクロバイオームが生成する生理活性物質が増えていることもわかりました。これが何を意味するかというと、乳がん生成の際に悪さをするエストロゲン代謝物の抑制であったり、ガンを生成したり、炎症を起こさせたりする物質の働きを抑制します。

 

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慢性疾患や成人病、メンタル系も含むほとんどの疾患に、「酸化ストレス」と「慢性炎症」が関わっていますが、地中海料理を食べる人は、乳腺組織の酸化ストレスと慢性炎症が低いそうです。

日本にいると「日本はプロバイオティクスの研究は進んでる」っぽいことをよく耳にしますが、研究はされているのだろうけれども、それが国民に全く還元されていない国だと思います。生きたプロバイオティクスが全く売られていないし、処方箋でも手にはいらない。生きたプロバイオティクスは普通冷蔵庫に入れられて売られています。日本のものは全て室温のプロバイオティクス。死んだ菌です。死んだ菌もお腹で生きた菌のエサになるので、プレバイオティクス的に働くので、腸内環境を整えるのには良いですが、生きたプロバイオティクスとは効果が雲泥の差。

あと、「スーパーに乳酸菌飲料がいっぱいあるじゃん!」と思う方もいるかもしれませんが、スーパーで売られている乳酸菌飲料などは砂糖や人口甘味料が入っているので長期で飲むと砂糖・甘味料の害の方が高い。残念。

良いプロバオティクスは海外から冷蔵でないと手に入らないのですが、でも、食事だけでも十分整えられることがこの研究でわかりました。

地中海料理は作れないかもしれませんが、日本も食材はとっても豊富な国。無水煮やグリル料理で、醤油と砂糖を使わず、野菜、魚を美味しく調理できます。醤油を減らす調理を目指すと砂糖も自然と減りますよ〜。

そこにたっぷりとエキストラオリーブオイルをかけて召し上がれ♪ 亜麻仁油やエゴマ油でもいいしね!

参考文献:

C. A. Shively, T. C. Register, S. E. Appt, T. B. Clarkson, B. Uberseder, K. Y. J. Clear, A. S. Wilson, A. Chiba, J. A. Tooze, K. L. Cook. (2018) Consumption of Mediterranean versus Western Diet Leads to Distinct Mammary Gland Microbiome Populations. Cell Reports, 25 (1): 47 DOI: 10.1016/j.celrep.2018.08.078