ナチュロパシックコンサルテーションがどのように行われるのか、症例を通してご紹介したいと思います。
まずは、40代前半の女性Tさん。妊娠を希望されていました。
Tさんの場合、不妊の検査や治療を行っていたわけではありませんでしたが、自然にまかせていたものの、妊娠には至っていませんでした。通常、二年の試みの上、妊娠に至らない場合は不妊とみなされます。医療の介入を考慮する前に、何かできることはないか、と、ナチュロパシックコンサルテーションを受けられました。
コンサルテーションでは、体の土台は健康で、エネルギーは十分にあるものの、免疫低下によって発生する感染症などいくつかの症状が見受けられました。ご本人にとっては、完全に生活に支障をきたすわけでもないので、なんとなくやりすごしてきていたそれらの症状を並べて、ナチュロパシックな観点から見ると、免疫の警報が鳴り続けているのが見えました。
また、免疫が下がるタイミングも、心理面ではなく、物理的活動による体への負荷が影響しているようでした。その免疫低下に影響していたもう一つの要因が、肝臓の負担。血液検査の肝臓の値は正常値でしたが、身体に現れているいくつかのサインから、食事内容と飲酒の影響が体に与えている影響が懸念されました。
肝臓が健康なうちは、摂取する食物やお酒の代謝を無事にこなしていて、数値には現れません。アルコールの代謝で肝臓がフルに働いている間に、肝臓が担う他の役目(栄養素の代謝、ホルモンの生成、アルコール以外のデトックスなど)がきちんとできているかどうかは、その数値には出てきません。アルコールの代謝には体の多くの栄養素が必要で、他の器官や機能に必要な栄養素までもうばってしまいます。それらも肝臓の数値には現れませんが、体のサインで現れます。免疫低下もそのひとつです。
そして、免疫は妊娠に必要な重要な要因です。免疫機能が正常に働いていないと、受胎と着床が阻められます。また、免疫が低下することで、小さな不調を引き起こし、その治癒のために栄養素がさらに奪われてしまうので、妊娠に必要な栄養素が体の中に残りません。
Tさんの場合の最優先事項は、免疫向上。心理面では非常にバランスのとれている方なので、主には身体の各器官の物理的なバランスを整えることにフォーカスします。また、子宮内膜症もあったため、その悪化も防ぎます。
Tさん向けのトリートメントプランの目標は;
- 免疫向上
- 子宮内膜症の炎症の軽減
- 妊娠率を上げるための体の栄養学的調整
トリートメントを二段階に分けました。
- 第一段階:デトックス
- 第二段階:プレコンセプションケア(妊娠に向けて体を整えるケア)
第一段階の処方は;
- 食事改善
- デトックスハーブ
- プロバイオティクス
- 亜鉛とビタミンC
大幅な食事改善と、肝臓のデトックス、および免疫を上げる亜鉛とビタミンCを処方し、一ヶ月様子を見ました。
Tさんは意志が強く、初回コンサルテーションのフィードバックの翌日から、完全な禁酒と徹底した食事改善を実施。一ヶ月後にフォローアップを行い、十分に身体がデトックスできていて、感染症の症状は軽減しているのを確認できたので、第二段階のプレコンセプションケアに移行し、妊娠に向けて栄養を補充し体を整えます。
第二段階の処方は;
- 食事改善の継続
- 亜鉛とビタミンC
- フィッシュオイル
- 妊娠向け総合サプリメント
第一回目のフォローアップを終了し、第二段階に切り替えて二週間が経った頃、吉報が届きました。なんと、Tさん、妊娠されました。
受精のタイミングを遡ると、第一段階の最後の方。第一段階のトリートメントだけで、無事妊娠に至ったようです。
その後は、妊娠中のトリートメントプランに切り替えて数回フォローアップを行い、無事出産されました。
最近では、特に男女共に問題はないにもかかわらず、妊娠に至らないケースが多く見られますが、こうして小さな阻害要因をとりはずしてあげるだけで、身体のバランスを整えられることが可能であることがわかるケースでした。