Food as medicineとは、医食同源と同じような意味で、医療・薬となる食物のこと。今回は菊編です。
菊は恋しかった日本の食材のひとつ。10月頃から市場に出始め、年末前にはシーズンが終わってしまうので、寒〜くなるまではほぼ毎日、およそ週の半分は食べます。
菊の話を書こうかな〜と思って、食卓にあった菊の酢の物の写真を撮ったら、とてもタイミングよく、お友達も買って調理してみたけれども、苦味が取れないとのこと。その時は理由はわからなかったのですが「うちでは酢を入れたお湯で湯がくよ」とお伝えしたところ、苦味が取れた、と。今まで知らなかったのですが、お酢が苦味を消してくれたんですね。
菊は、中国では伝統的に風邪、解熱や目の不調などに使われ、前立腺癌、胃がん、糖尿病などにも他のハーブと混ぜて漢方で使われています。菊花茶としても親しまれていますね。また、その抗菌作用から日本でもお刺身のお供に使われてきました。
ハーブでは、効能などの他に「体を冷やすハーブか温めるハーブか」などを表すハーバルエナジェティックスと呼ばれるグループ分けがあります。
菊はエナジェティックには、クーリング(体を冷やす)ハーブで、特に外側の熱を排除しながらも、同時に体内の循環を高めバイタリティを上げてくれるハーブです。なので、外から菌をもらった場合の風邪や解熱に良いとされます。
近年でも、多くの研究で菊の成分や効能が確認されています。薬理作用を持つ成分は主に、アカセチンを代表するフラボノイド類とセスキテルペンを代表する精油類です。アカセチンはメチル化されたアピゲニン。アピゲニンはハーブを勉強している人ならば誰でも知っている抗酸化・抗炎症・抗がん・抗腫瘍作用が高い植物の成分。アポトーシス、細胞のプログラムされた自然死、を促すという効果が注目されています。ガンは異常な細胞が腫瘍化したものですが、健康な人も体内で多くの異常な細胞を生みます。ただ、アポトーシスが働くので、異常な細胞も自然に死んでいくのでガンになりません。ガンとはこのプログラムされた細胞死が機能しない時に発生します。また、アピゲニンの分量が多くなると、カモミールに代表されるように抗不安作用ももたらしてくれます。
科学的裏付けが確認されている菊の効果は他にざっと...
15種類のトリテルペンジオール及びトリテルペントリオールやリナリンの抗がん・抗腫瘍作用
数多くの精油成分に含まれる、多種類のバクテリア、特にブドウ球菌やサルモネラ、に効く抗菌作用
初期の2型糖尿病のインスリン過敏性を高める作用
キサンチンから尿酸への酸化を触媒するキサンチン酸化酵素の働きを阻害し痛風を軽減する作用
日本の研究では、最強抗酸化物質グルタチオンの産生を助けてくれることがわかったようです。ということは、アンチエイジングにも良いですね。
そして、菊は目の健康に良いビタミンB2も含みます。
伝統的に使われてきたハーブや食材の裏付けを現代科学が少しずつ証明してくれています。
菊は西洋ハーブのカモミールと同じキク科ですが、構成するフラボノイドやセスキテルペンの種類が異なるため各効能やその程度が少し異なるようです。
欧米で菊を食べているのを見たことがありませんが、おそらく理由としては、ヨーロッパ人の6割がこの種の菊が含むアラントラクトンやアルテグラシンへのアレルギーがあると言われているからかも。カモミールも同じキク科でキク科アレルギーがよく注意喚起されますが、実態はそんなにアレルギー反応は出ていないとのこと。理由はどうやら同じカモミールでも産地によって成分が異なり、メディカルハーブで使用されるものにはアレルギー成分が少ないものが多いそうです。
シーズンの真っ只中が一番安くて美味しいので今のうちに是非どうぞ。ピンクの菊も美味しいです。