子宮内膜症と環境ホルモン

ここ数週間、顔のかぶれで自分の体に注意が集中していたので、リセットするために今日は深川不動尊の護摩焚きに行ってきました。すっきり。顔も順調に少しずつ治ってきています。

お散歩途中、お気に入りの公園で藤の花が満開でした。

今日はちょっと子宮内膜症についてお話します。

子宮内膜症はナチュロパシックコンサルテーションでもよく取り扱う疾患の一つです。生理がある女性の10人に1人は子宮内膜症があると言われており、近年その割合は増加していて現代病のひとつと考えられています。子宮内膜症は20代、30代に発症することも多いですが、ピークは40歳から44歳です。また、不妊の女性の25~50%に子宮内膜症が見られます。

こちらはオーストラリアの子宮内膜症に関する教育プログラムやリサーチを行っている団体のサイトのお医者さんが書いた記事。この記事では、腸管内膜症に関して言及しています。

子宮内膜症とは、子宮内膜が子宮の外の組織に移動・癒着し、月経時に内膜が増殖と剥離を起こします。簡単に言うと子宮の外で生理の出血を起こしてしまいます。一般的によく見られるのは、卵巣、膀胱、腹膜など。子宮近くの骨盤に囲まれた組織に発生することが多いです。

主な症状は、下腹部の痛み、月経痛、月経困難症、生理前の不正出血、性交痛、排便痛、血尿、腰痛、下痢、便秘、膨張感。これらの症状が主に月経時に発生します。性交痛、排便痛、消化器系の不調は月経に関係なく発生することもあります。

記事にある通り、まれに腸壁の内側(腸管内膜症)に発生することもあり、また、肺や皮膚、非常にまれに脳にまで子宮内膜が移動することがあります。これらは異所性子宮内膜症と呼ばれ、月経時に、腸壁の場合は血便、肺の場合は喀血、皮膚の場合は皮下出血、脳の場合は脳卒中を起こします。

異所性子宮内膜症はいずれも発見するのが非常に困難ですが、子宮内膜症は通常でも消化器官の症状を伴うことが多いので、腸管内膜症の場合も発見するのがとても難しいです。腸の上部に子宮内膜がある場合の症状は、定期的な骨盤痛、腸閉塞。腸の下部にある場合は、排便時の直腸の痛みや、月経時の直腸からの出血など。ただ、生理の時は、直腸からの出血と通常の出血を見分けるのは困難でしょう。

軽度の子宮内膜症はナチュロパシーでもコントロール可能です。記事に描かれている通り、オーストラリアではこのようにお医者さんにもナチュロパシーは認知されています。重度の子宮内膜症で手術などが必要な場合も、術後の生活・食事管理として、ナチュロパシーを利用するのはとても効果的です。遺伝的要因の上に、生活習慣で悪化させてしまうケースが多いので、まずは生活の根本的な見直しが必要になります。

子宮内膜症についてはまだ原因がわかっていませんが、子宮内膜症を持つ人の腹水には炎症性サイトカイン(細胞間で免疫に関わるシグナルを出す生理活性タンパク質)が増加していることがわかっています。欧米では子宮内膜症は自己免疫疾患であるという認識が広まりつつあります。また、子宮内膜はエストロゲンの作用で増殖をするため、エストロゲン様作用のある環境エストロゲンや重金属の関連も示唆されています。

ナチュロパシーでは通常以下の点にフォーカスして処方を考慮します。

  1. 環境エストロゲンの排除とデトックス
  2. ホルモンの調整
  3. 肝機能の向上
  4. 抗炎症
  5. 腸内環境の改善
  6. 抗酸化
  7. 免疫のバランス調整

ハーブでホルモンを整え、オメガ3脂肪酸や月見草オイルなどで炎症を抑え、プロバイオティクスで腸内環境を、また、アブラナ科の野菜や食物繊維を増やすことで、肝機能や腸内環境を整えていきます。何をどう処方していくかは、個人の状態でケースバイケースで決めていきます。

ただ、子宮内膜症のある人に対しても、ない人に対しても、汎用的にアドバイスできるのは1番の環境エストロゲンの排除。環境エストロゲンとは、ダイオキシン、PCB(ポリ塩化ビフェニール)、農薬など。ダイオキシンは生理用ナプキンやタンポンの漂白時に発生します。

環境エストロゲンが含まれている可能性のある生活用品とは:

  • ダイオキシン:漂白されたレーヨンやコットンなどを使った生理ナプキンとタンポン。漂白されたコーヒーフィルター。
  • BPA(ビスフェノールA): プラスティック、缶
  • 農薬:メトキシクロル、クロルピリホス、DDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)、殺菌剤,防カビ剤
  • フタル酸エステル類(DEHP・DOP・DBP・BBPなどの可塑剤):プラスチック製品、ビニール、マニキュア、合成香料(香水、ヘアスプレー、デオドラント、洗剤・柔軟剤、ルームスプレー、石鹸)、虫よけ
  • パラベン(パラオキシ安息香酸エステル) :化粧品・シャンプー・ボディケア用品などの防腐剤、除光液

上記成分を含む物はできるだけ使わないようにしましょう。電子レンジを使うときは、プラスチック容器は避けて耐熱ガラス容器に移し替えて使用しましょう。生理用品はオーガニックコットンで作られたものか、布ナプキンを。また、合成香料など、読んで内容がわからない香料が入っているものは避けましょう。缶詰もBPAが溶け出す可能性の高い酸性の中身のものは避けましょう。特に子宮内膜症の病歴を持つ家族がいる人は若いうちから注意したほうが良いでしょう。また、子宮内膜症だけでなく、子宮筋腫や子宮がん、乳がんなどの病歴が家族にある場合も同様です。

実は、イソフラボン(大豆やきな粉)やリグナン(亜麻仁油)などの植物性エストロゲンにもエストロゲン様作用があります。植物性エストロゲンは個人の体質によって、良い方向で働く場合と、悪い方向で働く場合があります。ここで簡単に説明できないのですが、薬を飲んでいても良くならない場合は、植物性エストロゲンの摂取にも注意してみると良いかもしれません。

実はこの子宮内膜症。とても少ないですが男性にも発見されています。前立腺がんの治療でエストロゲンを使用した際に発見されたそうです。確か1例は日本のケースだった記憶があります。人体の不思議です。