なぜ、うつのお話をしたいのか

来週末に予定している「うつのための自然療法」の資料を作っている最中に、「なんでうつのお話をしないといけないと思っているのか」を思い出させてくれることが立て続けに2つありました。

1つ目は、シドニーの友人がシェアしてくれたビデオ。10月10日はWorld Mental Health Dayだったそうです。

日本語字幕がないのですが、この彼はパラノイアや双極性障害の症状に追い詰められ、ゴールデンゲートブリッジから自殺を図り、奇跡的に一命を取り留めました。他に命を取り留めた19名の人たちと同じように、橋から飛び降りた瞬間に後悔の念がよぎったそう。「僕が本当は死にたくなんかなかったってことを誰も知らないままなんだ」と。

今でも、躁鬱、幻覚、精神異常の症状はあるけれども、それらとどううまく付き合うかを学び、サポートネットワークを作って周りと助け合いながら過ごしている。「大丈夫じゃないってこと自体は大丈夫なんだよ。助けが必要なのに助けを求めないことが大丈夫じゃないんだよ」と。

他の病気と同じように、自殺は臓器の死と同じで、その反対に、その症状とうまく付き合いながら生きて行く方法もある、ということ。

クリアに且つ冷静に過去の自分と今の自分のことを話すパワフルな彼のメッセージを聞いていて、ある男性のことを思い出しました。シドニーでナチュロパスとしてサプリメントのお店で働いていた時の男性のお客さま。コンサルテーションのクライアントのことは機密保持があるので普段ここには一切書けませんが、お店のお客さんのことはちょっとならば...。

少しジュード・ロウ似で誠実そうで一見健康そうな彼。木曜日のショッピングデーで夜遅くに私が一人で店番をしている時にお店に来て、30分ほどじっくり自分の体に起こっている不思議な変化を事細かに話してくれました。「最近、胸にぽっかり空洞ができたんだよ。他は全く普通だし、気分も悪くないし、何も変わらないのに、胸の真ん中に黒い空洞があるんだよ。ただの空洞。ここら辺に、こう、ね。無くならないでずっとずっとそこにあるんだよ。」と。子供ができたばかりで自分にお金を使えないから、コンサルも受けれないし、サプリも1つしか買えない。1つで全てをまかなえるサプリが欲しい、と。その時はセントジョンズワートと幾つかの栄養素が一緒に入っているサプリを紹介し、その後、効き始めるまでの数週間、木曜日の夜に数回立ち寄って経過を報告してくれていました。来る度に、自分の感情とその空洞について冷静に客観的に詳細に渡って描写をしてくれていたのです。

欧米の男性は恥ずかしがることなく感情を伝えられる人が多いですが、その彼の描写は特に上手で、彼の経験した『空洞』が私の中にも生々しくずっと残っています。

もう一つは元クラスメートのナチュロパスのスティーブン(彼もハーブを愛する素晴らしいナチュロパスです。外人にも慣れていてとってもラブリーな人なのでシドニーにいる方は是非どうぞ)がポストしていたアメリカのホリスティックな精神科のお医者さまが書いた記事、「うつに関するびっくりする7つの事実」(ナチュロパスはびっくりしませんが)。

簡単に訳すと、

  1. うつは炎症性のものである。セロトニンの不足や脳のケミカルな物質の不均衡がうつの原因と考えられているが、これまでセロトニンなどの神経伝達物質のレベルとうつの関連を実証できた研究は存在しない。一方で、慢性炎症が関係していることはこの20年研究によりわかってきているが、その事実が現場に落ちるまで時間がかかっている。
  2. 抗うつ剤は自然治癒のメカニズムに不可逆的な障害を負わせる可能性がある。
  3. 抗うつ剤の効果は「治癒」ではない。
  4. ほとんどの抗うつ剤は精神科医ではなく家庭医から処方されている。現場でうつの診断が正しく下されておらず、うつではない不安症やパニック症候群にまでも抗鬱剤が処方されている。(アメリカの話。日本は更に悪く、海外では一般的に抗うつ剤の併用はしないのが原則なところ、日本では薬の併用(精神科医の処方)が多いため事態が更に悪化しています)
  5. 多くの身体的・物理的症状が、精神的症状に似た症状を引き起こす。
  6. 基本的な生活・食の改善が、体の一番パワフルな自然治癒力を働かせ、うつを終わりにできる。
  7. うつは体の声であり、何が不均衡を生み出しているのかを探る良い機会である。

この中でも、特に5番。うつに見えるけれども、実は体の問題なことも多い。

記事にある通り『代表的なのは甲状腺や血糖値の関係。お医者さんに言われて「脳を治さなければいけない」と思うってしまうが、実は、腸内環境、ホルモンのバランス、免疫システム、自己免疫疾患、血糖値の不均衡、毒物(薬物含む)への接触など、本当は全身のシステムを見直すべき』

上記のどれもが他の様々な慢性疾患にも関係していることです。特に慢性炎症はうつにだけ見られるのではなく、どの疾患にも見られる傾向です。

全身の状態が関係するからこそ、いろいろな病気がうつの症状も伴い、また、うつに間違えやすい病気も多くあります。

正しい診断が行われないまま薬を飲むことになって、副作用に悩まされることになったり、また、一方で、疲れ、だるさ、睡眠障害、食欲の減退などの初期症状を放っておいて、対処が遅れ、うつの症状だけでなく他の病気のスイッチも押してしまったり。

一度『空洞』ができてしまうと、体を整えてその『空洞』を埋めてあげない限り、『空洞』はなくなるどころか全身を覆い尽くします。日本は特に声に出して助けを求めることが難しい文化・環境で、沈黙や我慢が美徳の世界。どれだけの人が『空洞』を抱えているのか。

 

さらっと「うつのお話をしま〜す」と告知しましたが、これらの事実を知っているからこそ「話して当然。話さなくちゃいけない。」と思っていましたし、お話の中で当然その対応方法に触れるつもりだったのですが、この2つのポストを立て続けに見て、「あ、そうか、こういう事実を全く知らない人もいるだろうからちゃんと説明しないといけないな」と思ったのでした。

今回、東京編は急遽行うことになったので告知も短かったのですが、お話を聞きたい方がいたらまた日を改めて開催しますのでいつでもお声がけくださいませ。

資料は後もうちょっとで出来上がりま〜す。たぶん!