隠れていた遺伝子

今度の日曜日にするうつのお話の資料がやっとできました。ギリギリじゃん、という感じですが、いい資料ができたと思います。

話は変わりますが、私には4つ年の離れた兄がいます。もちろん両親も同じで、父と母から半分ずつ遺伝子をもらっています。

背が高くて運動神経も良い兄と、背が低くて運動神経が致命的にない妹。

魚が嫌いでお肉が好きで、甘いものが好きな兄。動物の脂が食べれず肉も生クリームも苦手で、魚と果物が好きな妹。

お酒が飲めない兄と、今はもう飲めなくなったものの、もともと日本酒を愛し、過去には、飲んで飲まれてをウィークリーの習慣にしていた妹。

20代の10年を、アメリカで過ごした兄と、中国で過ごした妹。

高級マンションに住み、「これはなんですか?近未来の乗り物ですか?もしかして浮きますか?」と目をこすってしまう超高級車に乗る兄と、年月をかけてドラスティックに断捨離を続け、「できれば全財産をスーツケース2つぐらいにできたらいいなぁ」と夢見るソフトミニマリスト(もはやソフトではないかも?)な妹。

見た目も、食の嗜好も、趣味も、好みも、生き方も、全てが真逆な二人。

そんな二人に、共通することが見つかりました。

胆石。

最近胆嚢を摘出した兄と、最近の人間ドックで小さな胆石を見つけた妹。「え?」って。

小さい小さい石で、経過観察で何もする必要はないのですが、一瞬「何で?誰だ?」と思いました。これまでの検査では大抵コレステロールが低くて引っかかっていたので、胆石を作る理由もないし、それでもできたということは確実に遺伝だと思うけれども心当たりがない。きっと病歴をよく知らない早くに亡くなった祖父だろう、と勝手に決めつけておきました。

コレステロールは何度も値が低くて検査で引っかかています。油断すると肉を食べないので、普段、肉はできるだけ食べるようにはしています。でも、今回は中性脂肪も低くて引っかかってしまった。植物性の油は摂っているつもりだったのでちょっとショック。

しばらく「何で胆石?中性脂肪も低い...」と考え、「ああ、そうだ、そうだ」と思いました。

一般的に言われる、胆石を作ってしまう食生活のせいではなく、むしろ、脂質を摂らなすぎたのが原因の可能性が大。

極力肉は食べるようにしているものの、それでも無意識に避けているのは嫌いな脂。だって、本当に食べれないんだもの。ほんの少しは誤魔化して食べれるけれども、ステーキの脂とか豚肉の脂とかを塊で食べると、全身の力が抜けて一瞬死にます。鶏の皮もダメだし、モツもダメ。大トロも1切れ以上は食べれない。

胆汁は脂質の代謝に必要なので、脂質を摂らないと胆嚢が働かなくてなってしまうんですね。そして、動かなくなった胆嚢の中に胆汁がたまり結石化する。ある最近のコホート研究(Appleby, Key, & McConnell, 2017) でも、BMI(ボディマス指数:体重と身長から肥満度を測るものです)が高かったり、デンプンを多く食べると胆石のリスクが高まる傾向が見られたようで、その中で、標準BMI以下の場合、ベジタリアンの方がベジタリアンでない人よりも胆石のリスクが上がる傾向が確認されたそうです。

標準体重以下のペスカトリアン、ベジタリアン、ビーガンで、家族に胆石の病歴がある人は要注意。

今でこそ、比較的ちゃんとお肉を食べているけれども、それこそシドニーの4年間は忙しすぎてほとんど肉も食べていなかったような気が....。その間に胆石が作られたのでしょう。今ではお肉も多少食べているし、一生懸命、植物性脂質も摂っているけれども、それも十分ではないことが、中性脂肪の低い値に表れています。

胆石のリスクを高める食品は;

精製砂糖を多く使用した高カロリー食、甘い食べ物、過剰な果糖の摂取、少ない食物繊維、高脂質、ファストフード、ビタミンCの不足

また、胆石の予防になる食べ物は;

一価不飽和脂肪酸、食物繊維、オリーブオイル、オメガ3脂肪酸、食物性たんぱく質、果物、コーヒー、適度なアルコールの摂取、ビタミンCのサプリの摂取

私の食生活はまさに後者ですが、でも、今回のことでたんぱく質と脂質を今以上にしっかり摂らないといけない、と反省。

ペスカトリアン、ベジタリアン、ビーガンの人、たんぱく質と脂質はしっかり摂りましょう。お肉を食べれる人は、極力少量でも食べるようにしましょう。

そういうわけで、前回書いた通り、最近、豚肉も食べています。

あ、それから、この話を先日母にしたら、「パパが胆石やって大変だったわよ〜」と。父か。灯台下暗し。

遺伝、強力です。遺伝プラス食生活、最強コンビなので気をつけましょうね。

追記:兄の結石の成分はビリルビンカルシウムで、コレステロールが原因ではなかったようです。コレステロール結石より発症は少なく、炎症が原因。ビリルビンカルシウムの予防も上記と同じ抗炎症な食事、バランスの良い三大栄養素(炭水化物少なめ、たんぱく質・脂質をしっかり)。それから、腸内細菌叢のバランスを整えることも重要です。

参考文献:

Appleby, P. N., Key, T. J., & McConnell, T. J. (2017). Vegetarian diet as a risk factor for symptomatic gallstone disease. European Journal of Clinical Nutrition, 71, 731-735. dos:10.1038/ejcn.2016.252

De Angelis, M., De Bari, O., Di Ciaula, A., Frühbeck, G., Garruti, G., Q-H Wang, D., Lammert, F., & Portincasa, P. (2017). The role of diet in the pathogenesis of cholesterol gallstones. Cure Med Chem, DOI: 10.2174/0929867324666170530080636

Tseng, M., Everhart, J., & Sandler, R. (1999). Dietary intake and gallbladder disease: A review. Public Health Nutrition, 2(2), 161-172. dos:10.1017/S136898009900021X