食事指導の注意喚起

硬い蕾だった芍薬が咲き始めました。Peony。東洋でも西洋でも薬用ハーブとして使われ、女性ホルモンを調整してくれます。

特にPeonyとLicorice(甘草)のコンビネーションはPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の排卵障害の改善に使われます。

きらびやかなもの、派手なもの、ゴージャスなものはあまり好みではないのですが、ゴージャスな花の中でもなぜか芍薬の花だけは好き。

昨日、ちょっと憤慨することがありました。不妊・妊活の目的でお越しいただいたクライアントさん、初めにざっくり話を伺うと、不妊治療をし始めてからそれまできっちり来ていた生理が止まったとのお話。「え、なぜ!?」と思い、よくよく詳しく伺うと、生理が止まったのは、タイミング的に、妊活を専門とする整体師の方から糖質制限ダイエットの指導をされて実施し始めてから。

真面目なクライアントさんはその人が指導する過激な糖質制限ダイエットを忠実に守られたそうです。

過度に糖質ばかりを摂り、遅延性アレルギー(食物不耐性)や腸カンジダなどになっていた人が糖質制限ダイエットをすることで一瞬の効果が出ることがあるかもしれません。でも、海外で、ビーガン、ベジタリアン、過度なパレオや糖質制限ダイエットでホルモンバランスを崩す女性をたくさん見てきました。ホルモンの不調のある女性は、そのいずれか、または過度な糖質を摂っている人です。ただ、過度な糖質を摂っている人よりも、ビーガン・ベジタリアン・パレオや糖質制限ダイエットをしている人の方が、生理が止まったり、ひどいPMSなど、不調の度合いがひどいケースが多いです。

糖質制限ダイエットは若い男性向きです。男性でも短期間なら良いかもしれませんが長期間は向いていません。女性は特に肝臓を疲弊せてはいけません。女性ホルモンと肝機能は密接につながっており、また、女性の体はホルモンと体全体をうまく働かせるのにも適度な糖質(良質な炭水化物)は不可欠です。

常々、食事は「one size fits all(すべての人に合う1つの方法)」はないと警告しています。特に、ヨーロッパ系の白人やインド人などの体質は日本人のそれとは相当異なります。脂質・肉・乳製品の代謝の力が全く違うのです。気候も違います。なので、それらの地域で生まれた食事法はその点を踏まえ注意する必要があります。

日本人は乳製品の代謝酵素がない代わりに、穀類や豆類に対して特有の代謝の力があります。大豆のフィトエストロゲンも欧米人の女性の乳がんに対しては悪く働く可能性が高いけれども、日本人には乳がん予防に働くので、代謝に関わる酵素の遺伝子に何がしか違いがあるのではと予測されているぐらいです。また、それも普通の大豆や豆乳ではなく、お豆腐など伝統的な製法で作られた大豆食品による効果です。

それぞれの地域に自然に存在するものには全て存在する理由があります。人の体は何千年もかけてそれらに順応するように変化しています。今の生活で現代病や病気が異常に増え始めているのは、人の手で変えられた食品や食材を食べているからです。そもそも炭水化物(糖質と食物繊維が合体したもの)が悪いのではなく、食物繊維を排除して糖質だけを摂る生活のせいで現代病が増えているだけです。薬草の成分から単離して作られた薬の副作用が強いように、油にしろ、炭水化物にしろ、精製という過程で単離された成分ばかりを摂ったから出てきた副作用です。

こんな話をしていると終わりがないのでやめます。

昨日更に憤慨したのが、その食事指導により生理が止まり、検査の数値が悪くなったクライアントさんに、その整体師の方はアドバイスをくれるでもなく、質問に答えるでもなく、「数値が悪くなったので診れません」とサポートを断られたとのこと。怒りさえ感じます。

質問に答えられないのは、その下に土台の知識がないからです。症状の悪化に対応できないのも、サポートできないのも、その知識がないからです。

今は色々な人がいろいろなコンサルティングやカウンセリングを行っています。健康な人に対する食事アドバイスなら良いですが、疾患や特定の目的に対して食やサプリメントのコンサルテーションをする際は、栄養の知識だけでなく病態生理の知識が必須ですし、ハーブや栄養素のサプリメントを処方する場合は薬物動態学・薬力学の知識が必須です。

例えば、私が処方箋を書くときに、一番時間を使うことの一つに、選ぶハーブと栄養素がすでに飲んでいる薬と相互作用がないかを調べることがあります。文献がなくても、それぞれの肝臓の代謝酵素(CYP450の種類)を調べ、少しでもリスクがあれば出しません。先日は1つの新薬に関して調べるのに三時間をそれに割いてます。

ナチュロパスが使う参考書のようなものがあります。そこには、どの疾患に、どの栄養素やハーブを、どのくらい処方する、など書かれています。ナチュロパスは、症状を「アセスメント(評価)」をして、数ある選択肢の中から必要なものだけを選びます。もちろん、全部は出しませんし、全部は必要ありません。有益どころか害になる可能性があります。

今、実はその参考書の情報だけがインターネットなどで出回っているのです。

これまでも、「栄養の専門家の人に出してもらいました」という大量のサプリを処方された方などいらっしゃったのですが、「あ〜、丸ごと出してるな」というのが見て分かります。そういう情報を元に出したのだろうなとすぐに見て分かります。

普段は批判や非難はブログではあまり書かないようにしていますが、今回ばかりは妊活中の女性にそんなに無責任な対応をしている人がいるという事実に怒りを感じ、注意喚起のために、ご本人の承諾を得て書きました。

本当に、皆さん気をつけてください。いろいろな食事療法が出回っています。中には合う人もいるかもしれません。中毒性のある砂糖・糖・アルコールを断つのが苦しく、脳が抗うことはあれど、合う食事法であれば、体調自体は比較的すぐに楽になることで実感できると思います。もし、疲れを感じるようになったり、便秘や下痢になったり、良くない変化があるときは無理して続けず、指導してくれている人に問い合わせたり、または、他の方のセカンドオピニオンを得てください。