仕事の合間の休憩中に目にした記事に、思わず「え?」となったのでこちらでシェア。
今、NHKでやっている「人体 神秘の巨大ネットワーク」を見ている人も多いと思います。第1集は腎臓でしたね。腎臓の仕組みで紹介されていた脳みそのようなグニョグニョの丸い玉、糸球体。血管から濾過された様々な物質が糸球体の奥の通路に入っていき、体に必要なナトリウムイオンやカルシウムイオンが再吸収されて血液に戻り、尿を濾過していきます。その一連の作業をするグニョグニョ(腎小体:糸球体とボーマン嚢)とぐるっと長い尻尾(尿細管)の1セットをネフロンと呼びます。
特殊な顕微鏡でしか見れないネフロンの姿を「わおー!」と感激して見ていました。
さて、記事の話。
オーストラリアと日本の大学が共同で行った高血圧と腎臓病に関するリサーチで、日本人のネフロンの数が他の人種のネフロンの数よりも少ないことが判明。ヨーロッパ人には平均900,000個あるネフロンが、日本人には平均640,000個。高血圧を持つ人のネフロンの数はさらに少ないことがわかったそうです。
NHKの番組で紹介されていた通り、腎臓は他の臓器からの指令を受けて血圧など体内の様々な調整をする大切な臓器。
エンドステージの慢性腎臓病(CKD)の有病率は日本は世界でも二位に位置しています。透析を必要とするようなエンドステージの慢性腎臓病のもともとの 原因は、糖尿病、高血圧、動脈硬化などの生活習慣病。
要するに、ネフロンの数が少ない日本人は生活習慣病を発症した時に、他の人種よりも腎臓のダメージを早く受けやすいということ。デリケートな作りの糸球体はダメージを受け続け完全に壊れてしまうと再生できなくなります。その状態のCKDの有病率が世界二位。
世界における日本の糖尿病のランキングは近年は常に10位内に入っているようですが、高血圧・動脈硬化ともにランキングはそこまで高くない。にもかかわらず、CKDのランキングが高い理由が説明できます。
記事の中では、日本の妊娠中の厳しい体重制限(アメリカの11~16kgに対して、日本は7~8kg)を要因とする赤ちゃんの低体重化により、ネフロンの数が生まれながらにして少ないのでは、との懸念があるとのこと。
え〜、ネフロンの数が少なくCKDのリスクが高いというこの事実、他のことにも影響するのですが、長くなるのでまた次回。
参考文献
Bertram, J. F., Cullen-McEwen,. A., Denton, K. M., Hoy, W. E., Hughson, M. D., Kanzaki, G., Okabayashi, Y., Puelles,V. G., Shimizu,A. Tsuboi, N., & Yokoo, T. (2017). New insights on glomerular hyperfiltration: a Japanese autopsy study. JCI Insight, 2(19):e94334. dos:10.1172/jci.insight.94334.
Cores, J. & Levey, A. S. (2012). Chronic kidney disease. The Lancet, 379(9811), 165:180. DOI: http://dx.doi.org/10.1016/S0140-6736(11)60178-5