ピリピリするお野菜

いつもですが、これも長文なので注意です(アレルギー系の話は複雑なのでどうしても長くなってしまいます)。

相変わらずちょっと忙しい日々が続き、食事が不規則になっています。食事を作る時間もなく、食べそびれることも多いので、引き続きスムージーにいろいろ全部入れてしまって補完することがちょこちょこあります。よくないですが、やらないよりはマシ。

17112017

ところが、先日、新しく仕入れた小松菜で唇がかぶれました。口についた瞬間にビリビリきた。もったいないので飲んでしまいましたが、その後も全身ピリピリ。唇がかぶれる感じや全身のピリピリ感はヒスチジンを多く含む食品を食べた時の反応に似ています。

前使った小松菜は、仕入れが総じて良いスーパーで買った白い芯が多いものだったのですが、今回のは時間がなくて、ほうれん草と見間違えるほど青々としていている普通のスーパー(あまり好きではないスーパー)で買ったもの(上の写真)。

昔から、青い葉物野菜は土から直接吸収した成分が濃く残るので、特に生で食べるときは自然栽培のもの、と、注意して選んで買っています。なので、普段は青い葉物野菜はそのスーパーでは買わないのですが、今回は時間がなくてつい油断して買ってしまった。ちょっとありえないほどの結構な刺激。

一瞬、「あれ?小松菜ってヒスチジンはたいしたことないはずだけど、サリチル酸が多いんだっけ?」と思い調べてみました。サリチル酸や、アミン類(ヒスチジン、チラミン、アセチルコリンなど)は仮性アレルゲンと言ってアレルギー様症状を起こすことがあります。以前も『アレルギーと食べ物』で書きました(自分でも二度は読みたくないくらい長いので注意)。私はアトピー持ちでヒスタミン過敏症なので、炎症が出ている時はヒスチジン・ヒスタミンが多い食品(発酵食品・きな粉・高野豆腐・ナンプラー・チーズ・魚の缶詰など)は避けています。

でも、調べても、小松菜にサリチル酸は成分として全くないわけではないけれども多いという文献は出てこないし、ヒスチジンも含んでいるけれども高すぎるわけではない、という結果。

「でなければシュウ酸?」ほうれん草などに含まれるシュウ酸。シュウ酸は摂りすぎると尿路結石の元になる針状の結晶。やはりアレルギーの様な症状を起こします。粉砕された状態で唇についてすぐに反応したのでこの可能性は高い。でも、通常、小松菜にはほうれん草ほどのシュウ酸は入っていないはずだし、たまに少し刺激を感じても、今までここまで顕著な反応をしたことはない。

「じゃあ、硝酸塩が原因?」硝酸塩・亜硝酸塩は食品添加物でハム、ベーコンなどに使われますが、ほうれん草などの多くの野菜も硝酸塩・亜硝酸塩を含み、それにアレルギー様反応を起こすことがあります。でも、私はこれまで亜硝酸塩アレルギーを懸念したことはないのでこれもピンとこない。

でも、栽培時に窒素肥料が多いと野菜のシュウ酸、硝酸塩・亜硝酸塩も増えます。窒素肥料は慣行栽培で一般的に使われている肥料です。ヒスチジン・ヒスタミンもアミノ酸なので(タンパク質を構成します)窒素肥料で増える可能性はあります。質の良いスーパーではなかったので、化学肥料をバリバリに使ってるはずの野菜。化学肥料でなくて有機肥料でも成分が増える可能性があります。何かが起こってそれら刺激成分が膨大に増加していたのかもしれない。

でも「あそこまで速攻でひどい刺激を引き起こすほど影響を与えるの?」と、何となく納得がいかないというか、信じたくない。

小松菜って青い葉っぱでほうれん草の仲間に見えますが、実はアブラナ科です。ブロッコリーやキャベツ、菜の花の仲間。その種はマスタード。マスタードは、牛乳や卵ほど一般的ではありませんが、即効性アレルギー(IgE抗体が関与する一番一般的なアレルギー)のアレルゲンの一種で、ヨーロッパなどはアレルギーを持っている人が意外と結構います。IgEが反応しているのはマスタードのタンパク質の2Sアルブミン。それに似た構造のタンパク質に反応するので、反応はアブラナ科だけにとどまりませんが、少なくともマスタードだけではなく、そこから発達する野菜(ブロッコリー、キャベツ、小松菜など)にも反応する可能性があります。

「それか?」と思い、マスタードを試しに口に塗る。マスタードのピリピリ感はあるけど、アレルギーのピリピリとは違う。これでもない。

ちなみに今書いていることは全部遅延性アレルギー(食物不耐性:IgG抗体が関与するアレルギー)とは関係ありません。今回起こっているのは遅延性アレルギーで起こるような種類の反応ではない。

結果、考えられるのは、やっぱり、窒素肥料や化学肥料でシュウ酸かヒスチジンか硝酸塩・亜硝酸塩かが膨大に増えた、もしくは化学肥料が残っていて何がしかの反応を起こした可能性。調べると、窒素肥料の使いすぎでアレルギー物質や好ましくない成分が増える、また、それがガンを含み様々な病気に与える影響の研究がたくさん出てきます。

もし本当にそうだとしたらちょっと無視できない。でも、多分、そう。

慣行栽培野菜だと「物によってここまで違うのか」とちょっと衝撃的でした。有機でもたまに「強いな」と感じることがあるぐらい。自然栽培の葉物野菜は、食べたことがある人はわかると思いますが、葉物野菜も全く刺激がなく本当に安心して食べれます。

欧米ではここ数年ヒスタミン過敏症やサリチル酸過敏症など食物過敏症(仮性アレルゲンによる反応)による様々な疾患の症状悪化との関連が指摘されていて、無視できなくなってきています。特に影響が大きいヒスチジン・ヒスタミンに警報が出されている中で、「もともと体に必要な栄養素にこんなに過敏に反応してしまう人がなぜ増えているんだろう?我々の体が本当におかしくなってしまったのか?」と最近思っていましたが、そういうことか。

グルテンや砂糖だけが問題ではなく、化学肥料などの人為的コントロールで本格的に食べ物全般がおかしくなってきているようです。

さて、食物過敏症を起こす可能性のある食品(仮性アレルゲン)で一般的なものは以下の通り:

  1. ヒスチジン・ヒスタミン:発酵食品(チーズ、味噌、醤油、ナンプラー、麹)、時間が置かれた青背魚・白身魚や魚の缶詰(サバ、イワシ、カツオ、マグロ、サーモンなど)、きな粉、高野豆腐、ワイン、ビール、とうもろこし、なす、トマトなど
  2. チラミン:熟成・燻製・発酵食品。チーズ、ワイン、カカオ・チョコレート、アボカド、プラム、バナナ、ナス、トマト、鶏のレバー、熟成した果物やドライフルーツ、サワードウブレッドなど
  3. サリチル酸(アスピリンに反応する人):アプリコット、デーツ、プルーン、ピーマン、トマト食品、はちみつ、スパイス全般、ココナッツオイル、オリーブオイル、酵母エキス、ワイン、ラムなど
  4. シュウ酸:パセリ、ねぎ類、ほうれん草、人参、カブ、レタス、クレソン、ブロッコリー、セロリ、カリフラワー、キャベツ、イモ類、ニンニク、筍、コーヒー、カカオ、トマトなど
  5. 硝酸塩・亜硝酸塩:加工肉(ハム、ベーコン)、魚卵の加工(イクラ、タラコ、明太子)、葉物野菜(サラダ菜、春菊、ほうれん草、青梗菜、小松菜)、マッシュルーム、えのき、根菜(人参、ビーツ)、イチゴ

アミン類などはたんぱく質を構成する物質なので幅広い食材に入っています。栄養が偏ってしまうので怖がって全部食べるのを止めるようなことはしないでください。たいていはどれも火を通したり、ゆでたり(シュウ酸は特に)することでだいぶ反応は減らせます。

一般的に「良い」とされる食材もたくさん入っています。懸念される食品がある場合は、そのグループの食品群を食べた時の反応をじっくり観察してみましょう。遅延性アレルギーなどとは異なり、一般的には、口に入れた後、消化をして体外に出るまでの間に反応が起こります。

また、産地・栽培方法・製造方法で反応を起こさせる成分の含有量は大きく異なります。今回の内容の通り、問題成分の含有量がそもそも少ない食材の場合でも、栽培方法で成分が膨大に増える可能性があるので、食材はしっかり火を通すこと。生で食べる場合はできれば自然栽培のものを選ぶようにしましょう。特に、食物過敏症の影響を受けやすい、アトピー、アレルギー性鼻炎、うつ・不安症、頭痛・偏頭痛、ADD/ADHD、自閉症、精神疾患、IBSやクローン病などがある人は気をつけてください。

ヒスチジン・ヒスタミン過敏症の場合は、健康に良いと言われる酵素食品には注意。もともとヒスチジンが入っていない食材でも、酵素や麹が他のアミン類やアミノ酸を変化させてヒスタミンを生成してしまうこともあります(例:米味噌)。私はアトピーが出ている時は欧米で流行っているコンブ茶(紅茶キノコ)でもてきめんに炎症が悪化します。

ちょっと最近油断していましたが、やはり自然栽培のお野菜の宅配を再開しようかな、と思いました。自然栽培だけだと財政を圧迫するので、いい野菜を売っているスーパーやマーケットにも足を伸ばしてバランスよく、ですね。

参考文献

Anaphylaxis Campaign (2014). Mustard allergy: The facts. Retrieved from https://www.anaphylaxis.org.uk/wp-content/uploads/2015/06/Mustard-Word-version-6-Dec-2014-with-AC-logo-and-name-updated.pdf

Burdock, G. A., Dolan, L. C., & Matulka, R. A. & (2010). Naturally occurring food toxins. Toxins, 2(9), 2289–2332. http://doi.org/10.3390/toxins2092289

Clemente, A., & Moreno, F. J. (2008). 2S Albumin storage proteins: what makes them food allergens? The Open Biochemistry Journal, 2, 16–28. http://doi.org/10.2174/1874091X00802010016

Meyer, R.,  Reeves, L., Skypala, I. J., Venter, C., & Williams, M. (2015). Sensitivity to food additives, vaso-active amines and salicylates: a review of the evidence. Clinical and Translational Allergy, 5, 34. http://doi.org/10.1186/s13601-015-0078-3