調べ物をしていて、自分の過去ブログを漁っていたら、1年半前の自分の記事にびっくり。パン食べてますよ。そしてたまには食べる風なことを言っています。
嘘です。
というか、今はほとんど食べてなくて、逆に言うと、あの一時期だけ少し食べていたという方が正しいでしょうか。覚えている限り、ここ半年はたまの外食でそこにあったら食べるぐらいで、ほとんどパンは口にしていません。
上記の日記に至るには経緯があって、私はもともと10年ほど前にグルテン・砂糖・乳製品を数年間ほぼ完璧に止めていた時期があり、体が完全に切り替わった後から、外食時だけ比較的自由に食べるようになりました。でも、家では一切グルテン・砂糖・乳製品は食べていませんでした。
シドニーにいた頃は、高品質のオーガニック食品が手に入りやすいこともあり、クライアントに代替えのヘルシー食の案を提示するためにも自分が試さなくてはいけないこともあって、グルテンフリーのパンや品質の良い全粒のサワードウブレッドなどは食べるようになりました。
そのまま帰国し、上記の日記のように帰国当初はまだ、クライアントさんに紹介するためにも、シドニーで手に入るような良質の全粒サワードウブレッドやグルテンフリーブレッドがどこかにないか探していました。その後、結局「そういうものは日本に存在しない。あっても高すぎたり手に入りづらくて勧められない」という結論に至り、食べる理由がなくなったので、またパンを食べなくなってしばらくたちます。
ごめんなさい、日本では探すのを諦めました。東京に住んでいてもほぼ目にしないです。「これなら安心して食べてもいいよ」と言えるパン、ないです。探すのを諦めたら、いらなくなっちゃったので、食べていません。
常々、「One size fits all(誰にでも合う1つの方法)」の食事法は存在しない、と言っていますが、逆に止めた方がいいものは一緒、「グルテン・砂糖・乳製品」。これらにプラスして、化学調味料・トランス脂肪酸でしょうか。
砂糖については、最近まで家では蜂蜜すら使っていなかったのが、日本に帰ってきてから、やっぱりクライアントさんへのレシピ案などを考えたりするのに再度使い始めたぐらい。とりあえず、その他砂糖類は一切家には置いてありません。
乳製品も、やはり日本に帰ってきてからの2年でヨーグルトはまたちょっと食べるようになったぐらいで、チーズも牛乳も買いません。外では年に数回たま〜にチーズは食べます。
と、まぁ、こんな生活を送っていると、日本のパンの場合はどんなに良いパンでも、食べ過ぎると顕著にだるさを感じます。特に後の症状が顕著なのが、グルテン・精製炭水化物・化学物質・乳製品。
グルテンは体も頭もだるくなるし、白米や炭水化物の多いランチの後は眠くなってグラグラし(普段は全く眠くならないのに)、味の素が入った中華を食べると数時間後からうっすら頭痛がするのですぐにわかり、ラテの牛乳でもお腹を壊します。
そうそう、乳製品。気づいていない隠れ乳糖(ラクトース)不体制の人が多いですが、アジア人の85%が牛乳を分解する酵素ラクターゼを持っていないという説は有名です。アジア人やアフリカ系の民族は、赤ちゃんの間は多くのラクターゼを持っていますが、離乳後はラクターゼが減っていきます。毎日飲み続けると多少は存在する酵素が活性化していてお腹を壊すことはないけれども、数週間、完全に乳製品の摂取を止めた後に牛乳を飲んでみると酵素が全く働かずお腹を壊す人は多いと思います。
下痢やIBSなど顕著な消化器系の症状が出ていない=乳糖不耐性のダメージはないというわけではなく、アトピー・花粉症などのアレルギー症状、メンタルの症状、だるさ・疲れ、既存疾患の症状の悪化など、消化器系とは異なる部位で症状が出ている場合も多いです。グルテンや乳製品をやめるだけで、いろいろな症状が大幅に改善する人がとても多い。
と、アジア人8割以上にラクターゼが不足している件の論文を一応引っ張ってこようかと思って探してみたら、それより面白いトライアルが見つかったのでご紹介。
A1ミルク、A2ミルクってご存知でしょうか?オーストラリアにお住まいの人はスーパーに並んでいるA2ミルクを見たことがあると思います。A1ミルクは、乳の出が良い品種を更に品種改良を重ね育てられてきたホルスタインなどの乳牛から摂れるミルクのタンパク質ベータカゼインA1、一方で、オーストラリアやニュージランドで育つ別種の牛や山羊のミルクのタンパク質ベータカゼインA2を含むものがA2ミルク。北米や日本の牛乳はA1ミルクです。ミルクのタンパク質カゼインの害(自閉症、アトピー、心血管障害など)が取りざたにされている時は大抵このA1ミルクが対象です。
若干乱暴ですが、オーガニックフードの世界での立ち位置的に言うと、小麦で言うところの現代のアメリカの小麦(GMO)と古代のスペルト小麦(Non-GMO)的な違い、と例えればわかりやすいでしょうか。
A2ミルクが取れるオーストラリアやニュージーランドでは、A2ミルクは自閉症・統合失調症・糖尿病・心疾患などを予防する(または症状を悪化させる要因にならない)とされて、広くマーケットで売られています。A1とA2がミックスされたのが普通のミルクで、A2だけのものはA2ミルクとラベルに特記されています。
今日紹介するこの研究では、中国人600人(北京・上海・広州各約200人毎)に、A1ミルクとA2ミルクを混ぜたものと、A2ミルクのみのものをそれぞれ飲んでもらって、膨張感・鼓腸・お腹の痛み・便の状態など、急性の消化器系の症状を1時間後・3時間後・12時間後で測ったものです。面白いのは、乳糖不耐性の度合いを測るために、乳糖を分解した後に出る尿のガラクトースも測っていて、乳糖を分解・吸収できる体質か否かという切り口からも結果を見ています。
で、結論から言うと、すべての点においてA2ミルクのほうが消化器系の不調を起こす度合いが低く、却って症状を改善し、更に面白かったのは、A2ミルクのほうが酵素の働きを活発にして時間の経過とともに吸収・促進を促している、また、乳糖不耐性があるだろう対照群の消化器系症状が、乳糖不耐性がない対照群の症状と同じくらい改善している点。
要するに、乳糖不耐性を引き起こす原因は「ラクトース(乳糖)」または「ラクターゼ不足」なのではなく、「ベータカゼインA1」が問題なのかもしれない、ということ。A2ミルクであれば、一般的に言われるカゼインによる弊害を最小限にできるのかもしれないこと。
結果の数字をざっと見る限り、8割方出ていた症状が、ざっくり3割程度に減っているように見えます。今後の研究が期待されますね。
まぁ、いずれにせよ、日本は乳製品以外でも、小魚、大豆、海藻類、青菜など、カルシウムが摂れる食材の宝庫なので、牛乳は不要だと思いますが。
上述のラクターゼですが、ヨーロッパ人(コケイジャン)の8割は大人になってもラクターゼをたくさん生成できます。だから彼らはたっくさん乳製品を食べれるんですね。このような体質の差もあるので、コンサルでは人種も考慮しますし、ハーフのお子さんがクライアントさんの場合は、ご両親の出身地なども聞いたりします。
なので、海外で流行っているものに簡単に飛びつかないように、注意しながら日本人に合った食を紹介していきたいと思っています。
参照文献:
He, M., Sun, J., Jiang, Z. Q., & Yang, Y. X. (2017). Effects of cow’s milk beta-casein variants on symptoms of milk intolerance in Chinese adults: a multicentre, randomised controlled study. Nutrition Journal, 16, 72. http://doi.org/10.1186/s12937-017-0275-0