PFOSとPFOAは精液の質と陰茎の長さに影響を及ぼす

キャッチーなタイトルでお驚いてしまった方すみません。

「PFOSとPFOAってなになになに?!」と大慌てでクリックした男性陣はそのまま読み進んでいただいて、女性は「自分には関係ない話だけど〜」と思ってクリックしたかもしれません。

でも、これから話す化学物質は環境中及び体内での残留量が高く、胎盤を通って胎児に移行します。女性も大きな責任を負っています。子供を産むことを予定していなくても、環境への蓄積の悪循環を断ち切るためにも、また、臓器提供を考えている方は自分の体をクリーンに保つためにも知っていても良いかもしれません。

今日はこちらの研究のお話。ブログのタイトルはこの研究の「結論」から抜粋しました。

私は鉄のフライパンを使っていますが、その理由は、丁寧に使えば一生ものであること、長年使用しても変な化学物質が溶け出さないこと、そして、テフロン加工を避けるためでもあります。テフロンの危険として、製造工程で使用されるPFOAがあります。それがこの研究の対象の化学物質です。

PFOS (パーフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA (パーフルオロオクタン酸)は、PFAS(有機フッ素化合物)と呼ばれる化学物質のうちの一種で、撥水剤として利用されます。撥水(はっすい)とは水を弾くことです。従来、衣類、調理器具、食品包装紙、建材、フッ素系の表面コーティング剤、フッ素樹脂、洗剤、柔軟剤、消化剤や半導体など幅広く使用されてきました。世界的大手企業では3M社やデュポン社が使ってきています。1970年代後半からすでに飲料水の汚染の問題が出始め、2000年代からその環境汚染と人体への影響に対し本格的に国と企業が動き始め、各国が規制を始めました。2000年頃から3M社も使用を中止していますが、まだ世界では完全に使用を禁止できているわけではありません。日本でも遅ればせながら2007年頃から規制が始まり、現在では一部を除き使用が禁止されています

PFOSやPFOAは撥水機において非常に安定した成分だったからこそ、非常に幅広く用いられたわけですが、「安定した成分=分解しにくい」ということです。

新しくPFOSやPFOAを材料として使用するに際しての規制は始まったものの、すでに過去に色々な材料に使われてきたため、環境中にも人の体の中にも残っています。テフロン製造と同様に、原料にPFOS/PFOAを直接使用していなくても、製造工程で使用されることで大気や水に残留していきます。特に人の身近なところでは飲料水、食品、食品パッケージ、ハウスダストなどを通しても暴露されることが知られています。

PFOSとPFOAの体内の半減期(濃度が半分に減る期間)はそれぞれ約9年と4年と言われています。半減期なのでなくなるまでにざっくり倍の時間がかかるわけですが、環境中に存在する分に加え、古い材質のもの・安い材質のもの・PFOS/PFOAの規制がない国で製造されたものを使用し続けると、どんどん体に入って蓄積していきます。

PFOSとPFOAはテストステロンの受容体に結合して悪さをします。また、男性特有のガンだけでなく様々な臓器のガン、男性ホルモン異常、コレストロール代謝の異常、免疫機能の低下(IgEの低下)、胎児・乳児の発達障害を引き起こすと言われています。

すでに動物実験でPFOSとPFOAの発がん性や胎児の発達障害の害はわかっていました。この研究では、飲料水汚染があった地域の男子高校生を対象に生殖機能を調べたもので、通常の健常な男子高校生と比べてPFASの汚染地域の男子高校生は、ペニスが短く、また、精子数の減少、精子運動の低下、AGD(性器間距離:性器と肛門までの距離で不妊症のリスクや生殖機能を測ります)の減少が認められたそうです。男性不妊のリスクが懸念されています。

一方で、PFASと同様に、食品用器具や容器包装など、我々の環境に蔓延してきた環境ホルモンのDEHPなどのフタル酸エステルやBPA(ポリ塩化ビニル製品からのビスフェノールA)などは、エストロゲンの受容体に結合します。男性にもエストロゲン受容体はあり、これら内分泌撹乱物質(環境ホルモン)が現在の男性の不妊や精子の質に影響しているとされています。我々は様々な環境ホルモンに囲まれていて、この負の相乗効果が様々なリスクを押し上げる可能性があるわけです。

ここでは、もうDEHPやBPAがどのような作用を及ぼすかは書きません。なぜならばポイントはそこではないから。

というのも、アメリカだけでも、1.4秒に1つ、毎日15,000もの新しい化学物質が登録されていると言われています。いたちごっこです。

この蔓延した環境ホルモンを少しでも減らすポイントは:

  • 新鮮な食材を加工の少ない調味料で伝統的な素材の調理器具で調理すること
  • 簡単・安い・便利の加工&冷凍ベースで作られた外食・コンビニ弁当、安い食品を食べ続けないこと(概して人工調味料が多く、脂の質が悪く、製造過程で発生する環境ホルモンへの接触リスクも増えます)
  • 現代の素材のものを熱するときは注意(特に電子レンジなど)すること。プラスチックは使わず、耐熱ガラス容器に移し替えること
  • 飲酒日よりも休肝日を増やして体の解毒機能を高めること
  • 解毒のための栄養素は日常の食事では足りないので、年に数回は食べるものをクリーンにし、解毒栄養素を補充する、デトックス期間を設けること
  • 脂肪は脂溶性の毒素を溜めやすいので脂肪を溜め込まないこと
  • 塩化ビニールの手袋にアルコールをつけるだけでDEHPは溶け出します。なので、日常のお掃除も市販のお掃除洗剤に頼らず、できるところは安心の『重曹・クエン酸・セスキ炭酸ソーダ』で
  • あまり100円ショップには頼らず、使い捨てのものを減らし、長く使い、エコを考えた生活を

PFOS/PFOAは調べると誰の体内にも存在するようです。胎児には、母体の体内のPFOS/PFOA濃度が出産後に明らかに減るほどに確実に移行し、体から出て行ったとしてもそれは土、水、大気の環境中に残り、再度人の体に取り込まれていきます。ほぼ永久に分解されないのです。

そんなわけのわからないものが1日15,000個も毎日作られて行っていると思うと本当に気が遠くなります。

そうそう、覚えている人もいると思いますが、このPFOAの健康リスクを知りながらテフロン製造と販売をし続けたとして訴訟が起こり、デュポン社は2005年に民事最高額の約18億円の罰金を米環境保護局に支払いました。健康リスクとは、動物実験でPFOAによりラットが死んだこと、また、まさに、PFOAが胎盤を通して胎児に移行すること。

そして、2018年、PFOA に暴露したウェストバージニア州とオハイオ州の人々を代表して3M社やデュポン社などに対して集団訴訟を起こした弁護士に関するNew York Timesのアーティクルをもとに、今、アン・ハサウェイ、トム・ロビンス主演で映画を制作しているようです。

みなさん、便利なものにはホドホドに。あと、キーポイントは自分の体に解毒が出来る余地を残しておくこと、また、その意識をしておくことです。


参考文献:

  • Di Nisio, A., Sabovic, I., Valente, U., Tescari, S., Rocca, MS., Guidolin, D., Dall’Acqua, St., Acquasaliente, L., Pozzi, N., Plebani, M., Garolla, A., Foresta, C. (2018). Endocrine Disruption of Androgenic Activity by Perfluoroalkyl Substances: Clinical and Experimental Evidence. The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism. 104. 10.1210/jc.2018-01855.
  • Okada, E., Sasaki, S., Saijo, Y., Washino, N., Miyashita, C., Kobayashi, S., Konishi, K., M Ito, Y., Ito, R., Nakata, A., Iwasaki, Y., Saito, K., Nakazawa, H., Kishi, R. (2012). Prenatal exposure to perfluorinated chemicals and relationship with allergies and infectious diseases in infants. Environmental research. 112. 118-25. 10.1016/j.envres.2011.10.003.
  • 日本薬学会 環境・衛生部会「有機フッ素化合物について」:http://bukai.pharm.or.jp/bukai_kanei/topics/topics23.html
  • 環境省「国内の動向について」:https://www.env.go.jp/council/09water/y095-13/mat07_2.pdf